楽しいはずの食事の時間が、一瞬にして恐怖に変わる窒息事故。特に子どもは、よく噛まずに飲み込んだり、口いっぱいに詰め込んだりと、危険な場面が多いでしょう。
正しい知識を持つことで、悲しい事故から我が子の命を救える可能性が高まります。数年前になりますが、筆者は赤十字社が主催するハイムリック法をメインとした「救命講習」に参加しました。その時の経験をもとに、「気道異物除去」のやり方を復習していきたいと思います。
気道異物除去「ハイムリック法」とは?
ハイムリック法と呼ばれる気道異物除去は、食べ物などの異物が喉に詰まり窒息状態となった際に、異物を取り除く目的で行われる応急処置のことです。「腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう)」や「上腹部圧迫法(じょうふくぶあっぱくほう)」とも呼ばれます。また、乳児を対象とする場合には、「背部叩打法(はいぶこうだほう)」という方法が使われます。
1974年にアメリカのハイムリック医師が発表したことから、一般的にハイムリック法と呼ばれるようになりました。
気道異物除去のやり方 -乳児の場合-
まずは、乳児の場合を見ていきましょう。乳児とは一般的に1歳未満の子どもを指します。
乳児の場合には、「背部叩打法(はいぶこうだほう)」を使います。
- 子どもをうつ伏せにさせ、片方の腕にのせる
- 身体をのせている方の手で子どもの顔を支え、頭をやや下向きにする
- 反対側の手の付け根で、肩甲骨の間を強く叩く
動画を見ると、音がしっかりと聞こえるほど強く叩いていることが分かると思います。喉に詰まった異物を取り除くことが目的ですから、ためらわずに行うことが重要です。
筆者が参加した講習では、動画の女性のように、座った状態で脚の上にのせることも大事なポイントだと教えてもらいました。背中を叩く勢いで、子どもを床に落とさないためだそうです。
窒息に対する応急手当(乳児:背部叩打法)
背部叩打法(はいぶこうだほう)で異物を取り除くことができなければ、「胸部突き上げ法(きょうぶつきあげほう)」を実施します。
- 子どもを仰向けにさせ、座った状態でひざの上にのせる
- 片足をわきの下に挟み、頭をやや下向きにする
- 反対側の手で、指2本を使いみぞおちの辺りを押す(胸の厚さが3分の1沈む程度の強さ)
- 背部叩打法と胸部突き上げ法を交互に行う
1歳未満の子どもには、まず「背部叩打法(はいぶこうだほう)」を実施することをしっかりと覚えておいてください。
窒息に対する応急手当(乳児:胸部突き上げ法)
気道異物除去「ハイムリック法」のやり方 -幼児・大人の場合-
次に、1歳以上を対象とした「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」のやり方です。
- 処置を施す人の後ろに立ち、わきの下から両腕をまわし、みぞおちの辺りにおく
- 片手でにぎりこぶしを作り、親指を自分の身体の方へ向け、へそとみぞおちの間に当てる
- もう片方の手でにぎりこぶしをつかみ、斜め上の方へ引き上げるように圧迫する
ここでのポイントは、にぎりこぶしを作った手の親指を、しっかりと身体に密着させることです。文字だけでは伝わりにくいと思います。ぜひ動画で手の位置や向きを確認してみてください。
窒息に対する応急手当(成人・小児:腹部付き上げ法)
注意点
「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」は禁忌事項もあります。以下に挙げた人には実施できませんので注意しましょう。
- 1歳未満の乳児
- 明らかに妊娠していると思われる女性
- 意識がない状態の人
窒息状態の人がいたら、まずは意識があるかを確認します。意識がなければ、すぐに救急に連絡しましょう。意識がある場合、自分以外に救助者がいなければ、救急に連絡する前に気道異物除去を実施します。
もし心停止になった場合には、心肺蘇生を施します。※AED(自動体外式除細動器)があれば医療従事者でなくても蘇生処置ができます。学校や公共施設などに設置されていますので、普段からどこにAEDがあるかを確認しておくと安心です。
※AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器