2024年4月11日 更新

【経験談】あなたは知っていますか?アルコール依存症の実態

楽しく美味しく適量を飲むのであれば、問題ないお酒。しかし、これが『アルコール依存症』となると話は別。今回、実際にアルコール依存症者を家族に持つ筆者が、患者目線・家族目線でその実態をお話しします。

【治療内容】

アルコール依存症から回復するためには、一生お酒を断つ『断酒』が基本です。治療は、入院治療が主体とされていますが、患者の症状・状況などによっては、外来治療も不可能ではありません。
《入院治療の流れ》

1.解毒治療:目安期間2~4週間
断酒を開始し、離脱症状・合併症(肝硬変や腎不全、膵炎などの臓器障害)・低栄養などの治療。

2.リハビリ治療:目安期間約2ヶ月
精神的・身体的にある程度回復すると、リハビリ期間に入ります。このリハビリでは、患者本人の飲酒問題を認識させ断酒の道へと導き、断酒を継続させるための治療となります。個人カウンセリングや、断酒会やAAなどの自助グループ*¹への参加、そして抗酒剤*²や飲酒欲求を抑える薬の服用も始めます。

*¹ 自助グループでは、依存症患者同士がそれぞれの飲酒問題や経験を他者と共有し合い、断酒継続を手助けすることが目的です。
*² 抗酒剤を服用した状態で飲酒すると、吐き気や動悸などの不快な症状を起こす作用があります。


3.退院後のケア:(期間)退院後~一生
リハビリを無事に終え退院した後も、病院への定期通院・自助グループへの参加・抗酒剤の服用を三本柱とし、断酒継続します。
プレアルコホリズムの場合には、断酒ではなく、お酒による害を減らす『ハームリダクション=節酒(減酒)』を目標とする治療が主流です。個々の状況に合わせ、例えば1日単位~1週間単位で飲む量や飲む日数など、具体的に目標を決め、それに取り組んでいく形になります。

しかしながら、プレアルコホリズムでも、飲酒することで他者へ暴力を振るったり、社会的問題行動を起こしてしまう場合などは、依存症患者同様『断酒』が必要と判断されます。

このハームリダクション、近年では依存症患者でも試みられるケースが増えています。お酒を完璧に断つことは無理にしても、減らすことでも効果があるとし、断酒に対して強い抵抗感を示す患者に対して治療のハードルを下げ、少しでも多くの人が早い段階で自身の飲酒問題と向き合い、依存症の深刻化を防ぐことを目的としています。

家族に求められること

アルコール依存症は、本人だけの問題ではなく、一緒に生活する家族にとっても大きな問題となります。

また、家族が知らず知らずのうちに、アルコール依存症者が飲み続けることを可能にしてしまう行為『イネイブリング』をしてしまい、良かれと思って取った行為が逆効果となり、悪循環に陥ってしまうのです。

・本人が起こした飲酒問題の後片付け、後始末(暴力、飲酒運転、失禁、欠勤、借金…など)をする
・お酒を隠したり捨てたりする
・酔っている時に、批難したり説教する
・行動に起こさない脅しをする(これ以上飲み続けるなら離婚する…など)

これらの行為、一時的には飲酒行為を抑制するのに効果がある場合もありますが、長い目で見ると、回復への道を遠ざけてしまう危ない行為なのです。

では、どうしたらいいのでしょうか?


◎話をする場合、相手がしらふの時に落ち着いて話をする
➡酔っている人間相手に話をしても、話は一方通行です。むしろ相手を逆なでし、『お前のせいで腹が立った!飲まないとやってられない!』という状況になりかねません。

◎『何でやめられないの?』『ダメな人間』などの、相手を責める言葉ではなく、『昨日はすごく心配したよ』など、自分の気持ちを伝えるようにする
➡感情的になり相手を責めてしまうコミュニケーションは、当事者との信頼関係を損なう恐れがあり、信頼関係が壊れてしまっては、回復への最初の一歩すら踏み出すことができなくなってしまいます。

◎本人が起こした問題行動は、本人に責任を取らせるようにする
➡誰かが尻拭いをしてくれている間は、本人はなかなか事の深刻さに気付かないものです。


本人に取らせるべき問題行動の例として、以下のようなものが挙げられます。

・遅刻、欠勤の電話は本人にさせる
・他者に迷惑を掛けた場合、本人に謝罪をさせる
・壊した物は、本人が起きてくるまでそのままにしておく
・飲酒に関わる金銭問題には、一切関わらない

上記のようにイネイブリングをやめ、毅然とした態度を持って患者と接することが、次へのステップの土台へと繋がります。

治療を勧めるタイミング

嫌がる本人をよそに、無理矢理病院へ連れていくのはNG行為。まずは、患者自身が『自分は依存症である』ということを認識することが、第一段階です。

治療を勧める時は、本人がしらふで情緒が安定している時がベストと言えるでしょう。また、「警察沙汰になってしまった…」「会社をクビになった…」など、最悪の事態を迎えてしまった時も、チャンスと言えます。

身内だけではどうしようもできない場合は、第三者(本人の飲酒問題に関わる人や信頼できる会社の上司など)や、本人にとって影響力のある人などに頼り、外部の人間に助けを求めましょう。

家族への支援

依存症患者と向き合うのは、家族と言えども苦悩の連続です。「こういう時にどう対処すればいいのか分からない…」「同じ境遇の人と話をしたい…」と言った気持ちも出てくるでしょう。

そういった時は、迷わず以下の専門機関に相談してみて下さい。

・精神保健福祉センター・保健所
・自助グループ
・アルコール依存症専門医療機関

【経験談】祖父のアルコール依存症

【将来を棒に振る】

亡くなった筆者の祖父は、かなり重度のアルコール依存症でした。

祖父は独学で英語をマスターし、通訳として活躍できるほどの実力を持ち、仕事で海外に行くことも多かった人で、将来を有望視されていました。

独身時代も飲酒問題はあったようですが、祖母と結婚し家庭を持った後も、朝から晩までお酒を手放すことができず、午前様は当たり前。遅刻・欠勤・職場での飲酒などで職を何度も失い、遂には若くして無職に。

祖母が大黒柱として生計を立てることが出来るまでの間は、生活は常に逼迫状態。祖母は、質屋へ着物などを売りに行ってお米と交換してもらったり、母が中学校の修学旅行で必要だったボストンバッグを購入したと聞いています。

それでもお金に困った時は、祖父の母の元へ(祖母の両親は既に他界していました)度々金の無心をしたことも。

祖父自身収入が無くなった後は、お酒を飲むためのお金を工面するため、保険を勝手に解約したり、闇金融からお金を借りたり、祖母の仕事絡みのお金を(隠していた場所から)探し出しては使い込むように。

当時、何度となく闇金融の取り立てが来ていた祖父宅。祖父が留守中であっても、なかなか帰らない取立屋を相手に、祖母は『主人はおりません。私が借りたお金ではないので、私は払いません!主人が帰って来たら、どこに連れて行ってもらっても構わないので、働かせるなり何なりして、借りた分は本人に払わせて下さい!』と言ったそうで、予想もしていなかった祖母の発言に、取立屋はその後執拗な取り立てを一切やめたとのことです。

この発言の数日後、祖父が家に居る時に取立屋が訪問。この時、取立屋は祖母が言った通り、祖父をどこかへ連れて行き、数日間帰って来なかったそうで、その間祖父がどこで何をさせられたのかは、祖母も知らないと言っていました。そして、このようなことは、その後も何度かあったそうです。
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