2024年10月10日 更新

【経験談】ペットの安楽死。あなたはその選択肢を考えたことがありますか?

“ペットの安楽死”と聞いて、あなたはどんなイメージや意見を持っていますか?今回、日本と欧米の安楽死事情の違い、そして先日、愛犬に安楽死を選択した筆者家族の経験談をお話します。

『グッド デス (Good Death)』とは?

英語で「安楽死」は『Euthanasia/ユーサネイジア』と言い、ギリシャ語の「eu(英語のgood:良い)」と「thanatos(英語のdeath:死)」が語源とされており、『Good Death:良い死(望ましい死・望ましい死に方)』という意味になります。

この表現に、正直衝撃を受ける人は多いでしょう。しかしながらこの表現は、全米獣医師会の「動物の安楽死に関するガイドライン 2020年版*」にもしっかりと明記されています。それと同時に、安楽死を決して軽視しているわけではないことも強調されており、それはガイドラインが確立されていることが物語っていると言えるでしょう。

*参照:https://www.avma.org/sites/default/files/2020-01/2020-Euthanasia-Final-1-17-20.pdf

日本人の安楽死観

一般的に仏教・神道を信仰している人が多い日本。無宗教の場合でも、仏教・神道文化の影響を多かれ少なかれ受けている人は多いのではないでしょうか。

宗教的なことを話すと、仏教の思想で重要視されているもののひとつに「不殺生戒(ふせっしょうかい)」というものがあります。これは、仏教用語で「生物の生命を絶つことを禁ずる」という意味です。

たとえ仏教徒でなくとも、この思想は多くの日本人に浸透している部分があるのかもしれません。それゆえに、安楽死という手段でペットの死を敢えて早めるのではなく、自然の摂理に従って、寿命が尽きるその日まで…という考えを持つ人が多いのかもしれません。

【経験談】愛犬へ安楽死を選択した、筆者家族

若かりし頃のクレア

若かりし頃のクレア

2021年6月12日、我が家の愛犬クレアが9歳10ヵ月で天国へと旅立ちました。闘犬として育てられ…虐待され、2度も捨てられたクレア。そんなクレアをシェルターで一目見た瞬間、運命を感じ引き取った筆者夫婦。一切おもちゃで遊ぶことを知らない、興味を示さない、ただ飼い主である私たちと一緒に過ごすことができればそれが幸せ…という子でした。

クレアの病歴

闘犬として育てられていた影響で左足・お尻に異常があり、5歳になった時点で歩くペースは既に老犬並み。それでもお散歩は大好きでした。それからほどなくして、今度は慢性気管支炎を患いステロイドの薬が手放せない状態に。ただ、クレアはどんな時でも食欲旺盛で、必ず食べる子でした。飼い始めた当初、フィラリアの治療過程で(最初の飼い主にフィラリアの予防薬を飲ませてもらっていなかったため感染)晩ご飯を食べない日がありましたが、後にも先にもその1回のみでした。

介助の始まり

晩年のクレア

晩年のクレア

クレアは、一般的な犬より老化の始まりはかなり早いほうでした。その老化に拍車を掛けたのは、2019年夏に現在住んでいるテキサス州に主人の転勤で越して来てからでした。テキサス州の中でも非常に暑い地域で、4月にもなると気温は30度を超え、5月に入ると35度前後…真夏は40度を超える日も多い所。そして、クレアのおトイレは完全外派。人間にとっても過酷な気候なのに、毛皮を纏った老犬には更に過酷な環境だったのは言うまでもありません。

亡くなる約9ヶ月前から、重度の関節炎の影響で失便が始まり、自力歩行は可能でしたが介助が必要な状態でした。市販のオムツは失便向けではないため、試行錯誤して手作りオムツも作りました。

今年に入って、失便の相談&健康診断を兼ねて病院を受診した際、「まだその時(安楽死を検討する時)ではないけど…その時を知るために」と、その名も『最愛のペットのQOL査定、そして安楽死の検討』という質問表(全26問)を渡され、この頃からクレアの終末期を意識して生活するようになりました。

それから数ヶ月経った4月のある朝、今までに聞いたことのないような泣き声を上げながらウンチをしたクレア。明らかに痛みに苦しんでおり、直ぐに病院を受診。この時から強い痛み止めも1日2回服用することになりました。しかし、日に日に失便の回数・量が増えたため、お散歩(おトイレ)の回数を増やしてはみたものの、そうすると暑さで疲れてしまう…足も痛む…というデメリットもあり、散歩の回数を増やしては戻してみたり…を繰り返していました。

亡くなる数週間ほど前からは、筆者が朝散歩の準備をしてもカウチからなかなか下りようとせず、おやつで釣ってなんとかカウチから下りる…という状態にまでクレアの状態は悪化していました。

決断の時

亡くなる前日の夜の散歩で、突然血尿したクレア。救急へ連れていったものの、酷い込み具合で少なくとも4時間待ち…恐らくそれ以上待つ可能性の方が高いと言われ、そこまで待たないといけないのなら車の後部座席ではなく(コロナ対策で車内待機)、心地良い自宅で待つ方が良いだろうと、朝イチで再び病院へ行くことに。

朝ごはんをあげた時、昨日までがっついて食べていたのが嘘のように、餌を前に一瞬止まり、少し間を置いて食べ始め…途中立ち去り、また戻って少し食べを何度か繰り返し、結局全部食べ切らなったクレア。この姿を見た時、これが決断の時になるであろう…と、覚悟をした自分がいました。

病院へは主人が連れて行き、筆者と娘は自宅待機。様々な検査をする最中、クレアはぐったりとし、普段なら嫌がる検査ですら何一つ抵抗しなかったそうです。検査・診断の結果は、血尿に関しては膀胱炎でしたが、その他、左の手足・肉球の感触が無くなっている、左耳はほぼ聞こえていない、毛の抜け方から癌の可能性が高い、神経系の異常も見られることも指摘されました。ちなみに、これらのことは4月に病院を受診した際には、指摘されなかったことでした。

獣医は膀胱炎のことよりも、クレアのQOLを明らかに懸念している様子でしたが、最初は膀胱炎の治療方針を話してきたそうです。しかし、主人が「先生…クレアが自分の犬だったらどうしますか?」と聞いたところ、返ってきた言葉は「私の犬だったら、逝かせてあげる」と…。
以前から、主人とは「獣医が、安楽死した方がクレアにとって最良である」と判断した時は、それに従おう…と話をしていました。そのため、獣医のその言葉を聞いて、私たちは決断したのです。主人から電話をもらって、直ぐに筆者も娘と共に病院へ駆け付けました。最期の瞬間は、絶対一緒に居てあげたい、そして見届けるのが飼い主である私たち(娘も含めて)の責任であると考えていたので。
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