2024年10月10日 更新

【経験談】ペットの安楽死。あなたはその選択肢を考えたことがありますか?

“ペットの安楽死”と聞いて、あなたはどんなイメージや意見を持っていますか?今回、日本と欧米の安楽死事情の違い、そして先日、愛犬に安楽死を選択した筆者家族の経験談をお話します。

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大切な家族の一員であるペット(犬・猫)。彼らと過ごす時間はかけがえのないもので、少しでも長い時間を一緒に過ごしたいと思うものですが、彼らが飼い主の人間よりも長生きすることはなかなかありません。

人間よりも、遥かに早いペースで歳を取って行くペットたち。犬の平均寿命は約14歳。しかし、実際には犬種によってかなり差があり(一般的に大型犬よりも小型犬の方が寿命が長い傾向にあります)、10歳~15歳前後。猫の平均寿命は約15歳。とは言ったものの、猫も犬同様品種によって平均寿命にはバラつきがあり、8歳~18歳前後が一般的です。

当たり前ですが、人間同様ペットの寿命も皆それぞれ。歳を取り、何かしらの病気を抱えて、手術や治療をしながら病気と闘い寿命を迎える子もいれば、特に大きな病気をすることなく、老衰で亡くなるペットも。中には、若くして不治の病を患うペットや事故に遭ってしまうケースだってあるでしょう。

理由は何であれ、自分のペットが回復の見込みのない病気や怪我で苦しみ、彼らの命と向き合うことを迫られた時、あなたならどうしますか?

ペットの安楽死とは?

はじめにお話したいのが、保健所などで行われる「殺処分」と「安楽死」は全く違うものです。「殺処分=安楽死」と勘違いされている方もいますが、通常殺処分は炭酸ガスによるもので、犬や猫たちは苦しみながら亡くなっていきます。

安楽死の場合、予め意識を無くす薬を投与し、その上で心臓の機能を止める薬を投与します。こうすることによって、ペットは苦しむことなく穏やかに死を迎えることができるのです。

日本における安楽死の提案・検討基準

日本の現法律では、動物の安楽死に関する明確なガイドラインはありません。しかしながら、以下の様な場合が、安楽死を検討する基準*とされています。

①治療をしても病気や怪我の回復の見込みがない
②苦痛を伴っている
③重度の運動障害・機能障害に陥っている

※安楽死を検討する基準内容には上記以外のケースもありますが、ここでは病気・ケガをメインとした検討基準の一部を紹介しています。

とは言ったものの、日本では安楽死という選択肢を取らない獣医師が多いとされています。中には、飼い主から安楽死をお願いした場合でも、「出来る限りの治療や緩和ケアなどを行い、自然に死を迎えるその時まで頑張りましょう」…と、安楽死を断る獣医師もいるようです。

アメリカにおける安楽死の提案・検討基準

アメリカでは、ペットの安楽死のガイドラインがしっかりと確立されており(アメリカ以外の国でも、ガイドラインが確立されている国は多いです)、その中でもペットの生活の質・生命の質(通称QOL:Quality of life / クオリティ オブ ライフ)を、獣医師はもちろん飼い主も安楽死における提案・判断材料として非常に重要視しています。

▼QOLの評価は、以下の7つに大きく分けられます。

①苦痛:慢性的な痛みがあり、薬で痛みをコントロールすることができない

②空腹:自ら食べることができなくなる、強制給餌によってのみ食べる

③水分補給:度重なる嘔吐・下痢により脱水症状を起こす、体重が減少する

④衛生:失禁・失便が酷く、自ら汚物を避けることもできず体が汚れてしまう

⑤幸福度:今まで大好きだった物事全て(又はほとんど)に対して興味を無くしてしまう

⑥可動性:自らの力で立つことができない、又は歩こうとしても倒れてしまう

⑦体調の良い日よりも、悪い日が増えてしまう


これらに自分のペットの状況が当てはまる数が多ければ多いほど、ペットのQOLは低いことになります。

日本と欧米、安楽死観の違い

日本では「安楽死」という言葉を耳にすることはあっても、実際に自分のペットに安楽死を選択した…という人の話を聞くことは、あまりないのではないでしょうか?それもそのはず、日本ではペットの安楽死というのはどこかタブー視されている、又はかなりネガティブなイメージを持っている人が多いと言えるでしょう。

あるデータ*によると、日本の獣医師が1年間で行う安楽死処置数は平均約2.5件。一方、アメリカでは平均約90件と、この差はかなりのものです。この背景には一体何があるのでしょうか?そこには、文化的背景・宗教的価値観・動物観・死生観などが絡みあって、この数字に反映していると言えます。

*参照:https://core.ac.uk/download/pdf/233905415.pdf

欧米人の安楽死観

欧米で広く信仰されているキリスト教文化では、「全ての生き物に対する責任は、人間に託されている」という思想です。この動物観が基になっている欧米では、延命治療をすることよりも、ペットたちのQOLをより重視する傾向にあります。

時に痛みに苦しむペットに、延命治療などでいつまでも苦痛を味あわせること自体を虐待と捉える部分があり、ペットを肉体的・精神的苦痛から解放することも人間の責任であると考える人が少なくありません。

このため、欧米では終末期のペットに対し、安楽死ではなく「自然死」を選んだ場合の方が、自身の決断に罪悪感や疑問の念を抱くケースが多いという報告*がされています。
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この記事のライター

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