2020年3月23日 更新

【経験談】療育の難しさについて

発達障害児の育児で、多くの人が利用している「療育」。療育を通して、子供自身はもちろん、親も助けられる部分は大きいと思いますが、人によっては時に療育の難しさに直面することもまた事実。今回、筆者の娘(自閉症児)の療育を例に、その難しさについて触れてみたいと思います。

言語療法

バージニア時代の言語療法は成功に終わりましたが、主人の転勤先で始めた言語療法は見事なまでに逆の結果となりました。

新天地でのセラピーは通所型で、週2回・各30分。

初回の言語発達テストの結果を基に、セラピーの内容は決められたものの、娘には無理があるな…と思った部分が2つありました。


①セラピー中の30分間、ベルト付きの椅子に座らされた状態。
⇒車のカーシートなら話は別ですが、それ以外では自由に身動き出来ない状況は癇癪の元。

②セラピーの初めは、童謡(3曲)から始まる。
⇒童謡にそもそも興味がない(お気に入りのアニメソングは別)。更に、目の前で人が歌うことを酷く嫌い、私や(特に)主人が何気なく歌を口ずさむと、娘はそれに対していつも激怒。


とは言ったものの、相手はプロ。そこを踏まえて、まずは様子を見ることにしました。…が、結果は初っ端から散々なものに。

ベルト付きの椅子に座るのに嫌悪感を表し、なんとか座らせたものの、1分としてジッとしていられない娘。脱出を試みようとしたり、前後左右に身体をのけぞったりしながら、グズグズモードに突入。

しかし、セラピストはそんな娘の姿を全く気にせず、身振り手振りを交えながら歌を歌い始め、グズッている娘の手を途中から取り歌い続けるものの、『椅子が嫌・歌が嫌・更に手を取られ無理矢理動かされた』ことで、娘は完璧に癇癪スイッチオン。

泣き叫びながら『マミー!マミー!』『マミー、ハグハグ‼』『へルプ!!』と絶叫。『大丈夫だよ!頑張って!』と声を掛けるも効果なし。癇癪がエスカレートし、嘔吐きが止まらなくなったところで娘の横に行き*、ハグしながら『マミーも一緒に歌うから、歌ってみよう!』となだめるも、娘は全く落ち着かず。そんな中、セラピストはお構いなしで、しっかり3曲歌い切ってました。

*私は、娘とセラピストから少し離れた位置にある椅子に座るようになっていました。

童謡の後は、カードやおもちゃを使ってのセラピー。既に機嫌の悪い娘を相手に、ひたすらセラピーを進めようとするセラピスト。セラピストからの質問や話し掛けに対し、娘が全く関係ないことを発言したり、気になったおもちゃを指差しながら『遊びたい』ことを訴えるも、セラピストはそういった娘の発言や態度を全て無視するスタンスでした。

セラピストへの不信感

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セラピストの指導方法、それに対する娘の様子を数回見て、セラピストには、椅子のことや娘が童謡に興味がないこと、どんなことが娘の癇癪に繋がってしまうかなどを伝えましたが、セラピストから返ってきた言葉は以下の通りでした。

『嫌がるから歌うのをやめる…では、娘さんの勝ちになってしまう。』

『ここでは、私がボスであって、娘さんは私の言うことを聞く!っていうルールを覚えてもらわないと!』

『誰がボスかをちゃんと分からせることは、ママにとっても有利になるから、私がやってることはあなたのためでもあるのよ!そのうち、(あなた)私に感謝するわ!』

『それと、今後は娘さんがママに何か話しかけてきても、目を合わせず無視するように。』

『ここでの時間は、私と娘さん2人の時間なので、ママは私の許可なしに発言しないように。何かあれば、私から話し掛けますので。』

『そして、ママの存在がセラピーの邪魔になると判断したら、ママには退出してもらうし、場合よっては、今後ママには別室で待っててもらう形にします。』

これを聞いて、私が思った率直な感想は…

『いや…なんか違う。おかしいでしょ?』でした。

私自身、自閉症児であれ、嫌だから…癇癪を起すから…という理由だけで、トラブルの元になる物事を全て排除しても良いとは思っていません。自閉症のレベルや、個々の性格などにもよりますが、私は娘に対して、躾や家庭内のルール・娘や他者への安全などを考慮し、時にそれが娘にとっては嫌なことであろうともやらせる(又はやめさせる)こともあります。

だからこそ、やるべきことをやってルールに従う…と言う、セラピストの意向に真っ向から反対ではありませんでしたが、セラピストの言葉の端々に違和感を覚えました。

また、指示通りに反応出来ない、泣き叫んでばかりの娘に対し、声のトーンや話し方こそ変えないものの、セラピストが明らかにイライラしている様子が表情に出ていたのも、私の中で引っかかるものがありました。

やめる決断

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セラピーに行く度、主人にはセラピーがどんな感じだったかの報告はしていました。娘に合ったセラピー内容ではないかも?…と、主人も思ってる部分があったものの、一先ず様子を見ようというスタンスでしたが、セラピストの本心を聞いて、主人も不信感と怒りをあらわに。

主人と話し合い、バージニア時代のセラピストに相談してみよう…ということになり、事の状況をメールで説明、同じセラピストとしての意見、そしてアドバイスをお願いしました。

そして、彼女からの返信は以下の様なものでした。

◎セラピスト自身のやり方、所属している施設の方針はあるにしろ、自閉症児を相手にここまで頑なに自分のプランに沿った内容を押し通すのは、理解出来ないし無理がある。プロなら、その場の子供の状況に合わせて、臨機応変に対応すべき。

◎セラピー中、娘さんが泣き続けるということは、明らかに楽しめていない証拠であり、本来セラピー内容を見直すべき。

◎セラピストは、子供をサポートする立場であってボスではない。

◎1対1のセラピー、特に警戒心などが強い自閉症児のセラピーで、ママが参加してはいけない…というのは聞いたことがないし、なぜ参加したらいけないのか分からない。

また、娘の言語発達テストの結果に対しても、日本語力を全く考慮していないため、診断結果を鵜呑みにしないように…と言われました。

そして、彼女からのアドバイスは、①『セラピストに内容改善を求める』②『施設は変えずにセラピストを変更する』③『セラピーをやめる(新たに施設を探す)』というもの。

彼女の意見は、どれも私たち自身も思っていたことで、自分たちの感じ方がおかしいんじゃないんだ…と分かったことで、正直ホッとすることが出来ました。

この他、娘と年齢が近く、同じく言語療法を(アメリカで)受けている子供を持つ友人に、彼らのセラピー内容を聞き、更に私たち夫婦のそれぞれの親に意見を聞いた結果、私たちは『やめる』決断をしました。

セラピストに対する不信感がどうしても拭えず、例えセラピー内容を変更してもらっても、このセラピストに娘を預けることは出来ないし、施設の対応に不満*があったことも、やめることに至った理由の一つです。
*同施設で、作業療法も受けることになっていた娘。初回のコンサルテーション以降、施設からの連絡を待つように言われるも連絡ナシ。こちらが電話・メールをしても、オフィスに出向いても担当者がいないことを理由に放置されっぱなし…という扱いでした。

セラピーをやめた今

セラピーをやめたのは2019年12月下旬。それ以降、新しい施設を色々調べるも、『ここだ!』と思える場所がなく、セラピーはお休みしています。

現在住んでいる地域は、療育に限らず、様々な面でサービスや施設そのものが限られており、その質も決して良いとは言えないようなところ。

本来、言語療法・作業療法・ABAセラピー、この3つのセラピーを受けるように勧められている娘ですが、信頼出来る施設・セラピストに出会えないのであれば、自宅で自分たちの出来ることをしていこうというスタンスで、この数ヶ月を過ごしています。

『療育を受けないから、娘が良い方向に成長することが出来ない』と言ったような考え方や、焦りの様なものはありません。

やみくもに療育を受けるのではなく、娘が楽しみながら学べる環境があれば、その時はまた療育を再開するつもりでいます。

まとめ

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いかがでしたでしょうか?障害の早期発見・早期療育が推進され、『一刻も早く療育を受けさせないと!』『療育をしないと子供がちゃんと成長出来ない…』と思う親御さんは多いかもしれません。

しかし、数ある療育施設の中から、お子さんに合った施設・セラピストを探すのは時に難しいこともあります。

人(子供)対人(セラピスト)のセラピーゆえに、子供とセラピストの相性、セラピー方針・内容などによっては、プラスになるはずのセラピーがかえって逆効果…ということも。どれだけ療育が良いとされていても、子供や親にとってストレスになってしまっては本末転倒です。

療育の難しさに直面した時、立ち止まることを恐れず、疑問に思ったことをうやむやにさせないで下さい。家族や友人・施設・セラピストなどに相談し、子供にとって本当に何がベストであるかを今一度検討してみましょう!
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この記事のライター

Sky_Macanoni Sky_Macanoni

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