2019年8月27日 更新

学校だけでなく家庭でのトレーニングがカギに!野菜好きな子どもに育てる「ベジトレ」とは?

小学校の現場で深刻化する「給食残し」問題を調査!子どもが残す給食トップは「野菜メニュー」 専門家が指南! 野菜好きな子どもに育てる「ベジトレ」とは?

専門家に聞く!家庭における「ベジトレ」のポイント

こうした背景をふまえて、今回は子どもの食育事情に詳しい、栄養士・料理研究家・食コンサルタントの浜田陽子先生に、家庭における「ベジトレ」のポイントについてお話をお伺いしました。

■現代のパパ・ママ世代は「食育崩壊世代」!?
先生も親も、子どもの好き嫌いには悩まされるものです。特に家庭においては、子どもの好き嫌いに大人のほうがひるんでしまい、偏食を許容しすぎているように思います。

とはいえ、私自身も2人の子どもをシングルマザーとして育ててきた経験がありますので、子どもが言うことを聞かないときには、「注意するのが面倒」「平和に過ごしたい」という気持ちが先行して、好き嫌いや偏食をつい許容してしまいそうになる気持ちもわかります。

特に、現代のパパ・ママ世代は、共働き率も高く、時間的にも精神的にも余裕がないことが多いです。加えて、この世代は「食育崩壊世代」とも言えます。

これには、日本の「食」に関する歴史が深く関わっています。高度成長期からバブル期にかけて、日本では食の欧米化が進みました。“食べれば食べるほどよい”という風潮で、最もエネルギーを摂取した時期でもあります。この時代に育った子どもが大人になって、生活習慣病という社会問題も顕著になりました。その世代を親に持つ、或いは自身が親になったのが、今のパパママ世代です。

こうした背景から、大人たち自身も「食育」について十分に考えられていないことが少なくありません。しかし、そもそも「食事」とは子どもの心身を育てるためのものであり、その根底にあるのは、子どもたちを豊かに育てたいというシンプルな願い。

目の前の好き嫌いに振り回されることなく、「子どもたちが健康で幸せになるために、我々大人はどういう食事を、どういうスタンスで提供すべきか」という視点に立ち戻って考えることが重要です。


■家庭での「ベジトレ」を通じて、まずはチャレンジのきっかけをつくることが重要
今回の調査では、給食の残食率、中でも野菜メニューの食べ残しが多いという点がわかりました。実際に、学校現場で話を聞いていても、生徒たちが野菜メニュー、特に生野菜を残すことが多く、大量に残食で戻ってくるという話をよく耳にします。

残されている野菜は、ピーマンやニンジンなど昔から大きく変わってはいませんが、現代ならではの特徴と言えるのが、「食べてもいないものを嫌がる」子どもが多い点。見た目が気持ち悪いから、色が気に入らないからといった理由で、チャレンジすらしないというケースが目立ちます。ひどい場合は、前にピーマンがダメだったから他の緑の野菜も全部ダメ、という子どももいます。

こうした状況になると、親自身もあきらめてしまいがちですが、実はちょっとした声掛けがきっかけで食べられるようになることは多いもの。また、「昨日は食べられなかったけれど、今日は大丈夫だった」、「給食では食べられなかったけれど、家では食べられた」ということも珍しくありません。

野菜を好きになるトレーニング=「ベジトレ」を通じて、まずはチャレンジのきっかけをつくることが重要です。そして、この「チャレンジ」というステップを踏むことが非常に重要。こうしたスタンスは、食だけにとどまらず、その後の子どもの人格や考え方にも影響をおよぼし得ると思います。

というのも、子どもは大きくなるにつれ、ひらがなが書けるようになったり、跳び箱が飛べるようになったりなど、チャレンジと成功体験を積みながらさまざまなことができるようになります。そして、1日に3回も機会がある食事は、他のことに比べて成功体験を積むチャンスがたくさんあるのです。

野菜嫌いの克服という目先のことだけではなく、それを通じて、子どもが豊かで健やかで幸せな生涯をおくれるようにするのが、本当の食育だと思います。


■苦手意識を持っているポイントの見極めとフォローが重要! 野菜ジュースを活用するという手段も
また、野菜嫌いの克服については、子どもが“美味しくない”と感じた要素がどこにあるのかを探すことも重要です。

例えば、トマトが嫌いな子どもは、味そのものが嫌いというよりは、生トマトの食感が嫌いというケースが多いです。どこに苦手意識を持っているのかを見極めて、その要因となっているところをフォローしてあげることが大切だと思います。

生の野菜でうまくいかない場合は、野菜ジュースを使うのもおすすめです。野菜ジュースを飲ませたからおかずを一品減らそうという考え方はNGですが、「補助」としてはいろいろな使い方が可能です。

おうちで作れば甘さが調整できますし、最近は市販の野菜ジュースも格段に飲みやすくなっています。もちろん生の野菜を食べられるようになるのが本当の克服ではありますが、「口に入れた」という実感を持たせるためのファーストステップとしては有効と言えるでしょう。

もし、野菜ジュースをそのまま飲むのも難しいようであれば、料理に使ってみるという手段もあります。煮詰めてソース風にする、トマト煮やラタトゥイユに使う、カレーやシチューの水分のかわりに使う、他のゆで野菜と一緒にミキシングしてポタージュにするなど、使い方もさまざまです。

このときのポイントは、「この料理に野菜ジュースが入っていたんだよ」ときちんと子どもに教えること。子ども自身に「この料理には野菜ジュースが入っていて、自分の口に入った」ということを理解させることが、成功体験へとつながり、野菜嫌い克服への第一歩になります。
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この記事のライター

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