2024年11月5日 更新

【経験談】発達障害児療育の難しさについて

発達障害児の育児で、多くの人が利用している「療育」。療育を通して、子供自身はもちろん、親も助けられる部分は大きいと思いますが、人によっては時に療育の難しさに直面することもまた事実。今回、筆者の娘(自閉症児)がアメリカで受けた療育を例に、その難しさについて触れてみたいと思います。

療育とは?

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療育(治療教育)は、身体障害・精神障害(発達障害を含む)・知的障害の子供たちを対象としており、障害のある子供それぞれに合った治療・保育・教育を行うことで発達を促し、社会的に自立できるトレーニングを専門的に手助けしてくれる取り組みを言います。

療育では、専門家がそれぞれの子供の特性や状況を見極め、その子に合ったプログラムを提案。療育を通して、出来ないことや苦手な部分を少しずつ減らし、更に得意な分野をより引き伸ばし、日常生活をより送り易いようにするのが目的です。

《主な療育の種類》

◎理学療法:PT
先天性(脳性麻痺やダウン症など)・後天性(事故など)による運動機能の障害や、運動発達の遅れのある子供に対して、遊びなどを取り入れながら運動発達を促し、運動機能を改善する。

◎作業療法:OT
自閉スペクトラム症・脳性麻痺・知的障害・発達障害などの子供に、日常生活(着替えや食事など)をよりスムーズに行える手助けをします。この他、学習(はさみを使った作業、お絵かきや文字を書く、本読みなど)やゲーム、社会性を身に付けるトレーニングも行われます。

◎言語聴覚療法:ST
聴覚障害・自閉スペクトラム症・学習障害・ダウン症・重症心身障害などの子供を対象とし、言葉の基礎を伸ばす取り組みが行われます。絵やカード・おもちゃ・体などを用いりながら言葉に触れ、言葉によるコミュニケーション力を高めていきます。また、ジェスチャーやサインを使い、言葉が出てこない場合でも、自分の意思を表現出来る練習もなされます。この他、発音がはっきりしない・言葉につっかえてしまう子には、発音の訓練も行われます。

◎ABA(応用行動分析学)セラピー
自閉スペクトラム症・発達障害を持つ子供に用いられ、問題行動(酷い癇癪や自他を傷付ける行為など)を改善するための療育です。問題行動を減らしていき、自分の感情や行動を上手くコントロールするスキルを身に付けることを目的とします。

療育のメリット

療育に通うことは、子供はもちろん親にもメリットがあるとされています。一般的に言われているメリットを、子供・親目線でそれぞれ見てみましょう。

〚子供〛
◎苦手・不得意な部分をサポート、そして得意とする部分をより伸ばしてくれる。
◎出来ることを増やしていくことで、自己肯定感が強められる。
◎人と関わることで、社会性を身に付けることが出来る。

〚親〛
◎同じ様な障害を持つ保護者と、情報を交換し合ったり、悩みを相談しあったり、アドバイスをもらうことが出来る。
◎障害についてより深く知ることができ、専門家によるアドバイスをもらうことが出来る。

【経験談】療育成功例

アメリカ・バージニア州在住時代、娘が2歳になってから始めた言語療法。週に1回1時間(セラピストのスケジュールによっては、週に2回ということもありました)、セラピストが自宅へ訪問してくれるスタイル。

人見知り・場所見知りが酷い娘にとって、一番自分らしくいられる環境でのセラピーは、娘にとってストレスフリー、イコール私にとってもストレスフリーでいられました。

担当してくれたセラピストは、特別な物(教材や知育玩具など)は一切使わず、自由に遊ぶ娘と一緒に遊びながら、沢山話し掛けることで発語を促す取り組みでした。たとえ遊びであろうと、何かを強いられることに抵抗しやすい娘にとって、このスタイルは伸び伸びと言葉を習得することが出来ていたと、私は思っています。

また、セラピストは日本語を時に話す娘に対し、『今の日本語はどういう意味?』『これは何て日本語で言うの?』と、バイリンガル環境であることを尊重してくれていました。

当時、娘は自閉スペクトラム症の診断を受けていなかったのですが、グレーゾーンの中で娘の発達や行動に悩んでいた私に対し、セラピストはしっかりと耳を傾けてくれ、時にセラピストとしてのアドバイスでけでなく、同じ母親としてアドバイスをくれたこともありました。

8ヶ月程続いた彼女とのセラピーは、娘はもちろん私もセラピーの日が待ち遠しく、バージニアを離れた今も連絡を取り合う程の関係を築くことが出来ました。

【経験談】疑問を抱いた療育例

作業療法

同じくバージニア在住時代、言語療法に加えて作業療法もすることになり、2~3週間に1回1時間自宅でのセラピーでした。

とあるセラピーの日、『散歩時のこだわりの強さ・それに伴う酷い癇癪に困っている…』という私の話を受けて、あえていつもとは違ったルート(普段の私との散歩では、大癇癪に繋がるNGな行為)を、セラピストを交えて3人で歩いてみることに。

普段なら絶対に別ルートを通りたがらない娘が、セラピストに手を繋がれて歩き出すと、今まで進むことを頑なに拒否していたルートをルンルンで歩き始めたのです。すると、セラピストからは『娘さん、ちゃんと歩けるじゃない!』と言われ、『いや、私との散歩では本当にこうはいかないんですよ…』と説明するも、『ほらっ、こんなにお利口さんにちゃんと歩けてる。単に気分の問題よ~!』と言われるだけで、散歩は終了。

確かに気分の問題…と言うのは一理あると思うし、そこに私に対してのわがままや甘えもあるんだろう…という想像は私でも付いていました。私なりに試行錯誤しながら対処しても、どうにもならないから困っているわけで、『気分の問題』で片付けられてしまったことは、どこか腑に落ちないものがありました。
セラピストには、『私がやってきた対処法以外に、何かトライ出来ることはありますか?』と聞いても、『さっき歩けたしね…』で特にアドバイスはなし。

その翌日、再び娘と2人きりでいつもの散歩へ行ったものの、結果は惨敗。前日のお利口さんは幻だったかのごとく、全く言うことを聞かず、挙句の果てに道端で大癇癪。顔を叩かれ、髪を引っ張られながらも、暴れまくる娘を肩に担いで帰宅。帰宅後も暴れっぷりは止まらず、最終的に落ち着くまでに40分近く掛かりました。

この出来事を次のセラピーで話すも、セラピストの反応は『どうしてだろうね~?』『分からないわ…やっぱり、ママだから甘えてるんだと思う』で終わり。

セラピストに、絶対的な答えを求めているわけではありません。でも、セラピストならもう少し何かしらの見解やアドバイスがあっても良いんじゃないか?…と思わずにはいられませんでした。

セラピストに違和感を覚えながらも、その後数回はセラピーを続行。日によっては、娘のことを聞かれるだけで、娘に対するセラピーそのものは皆無。かと言って、私が何か聞いたところで『何でかしら?分からないわ…』以上の答えはもらえず。最終的に、3ヶ月程でやめることにしました。

言語療法

バージニア時代の言語療法は成功に終わりましたが、主人の転勤先で始めた言語療法は見事なまでに逆の結果となりました。

新天地でのセラピーは通所型で、週2回・各30分。

初回の言語発達テストの結果を基に、セラピーの内容は決められたものの、娘には無理があるな…と思った部分が2つありました。


①セラピー中の30分間、ベルト付きの椅子に座らされた状態。
⇒車のカーシートなら話は別ですが、それ以外では自由に身動き出来ない状況は癇癪の元。

②セラピーの初めは、童謡(3曲)から始まる。
⇒童謡にそもそも興味がない(お気に入りのアニメソングは別)。更に、目の前で人が歌うことを酷く嫌い、私や(特に)主人が何気なく歌を口ずさむと、娘はそれに対していつも激怒。


とは言ったものの、相手はプロ。そこを踏まえて、まずは様子を見ることにしました。…が、結果は初っ端から散々なものに。

ベルト付きの椅子に座るのに嫌悪感を表し、なんとか座らせたものの、1分としてジッとしていられない娘。脱出を試みようとしたり、前後左右に身体をのけぞったりしながら、グズグズモードに突入。

しかし、セラピストはそんな娘の姿を全く気にせず、身振り手振りを交えながら歌を歌い始め、グズッている娘の手を途中から取り歌い続けるものの、『椅子が嫌・歌が嫌・更に手を取られ無理矢理動かされた』ことで、娘は完璧に癇癪スイッチオン。

泣き叫びながら『マミー!マミー!』『マミー、ハグハグ‼』『へルプ!!』と絶叫。『大丈夫だよ!頑張って!』と声を掛けるも効果なし。癇癪がエスカレートし、嘔吐きが止まらなくなったところで娘の横に行き*、ハグしながら『マミーも一緒に歌うから、歌ってみよう!』となだめるも、娘は全く落ち着かず。そんな中、セラピストはお構いなしで、しっかり3曲歌い切ってました。

*私は、娘とセラピストから少し離れた位置にある椅子に座るようになっていました。

童謡の後は、カードやおもちゃを使ってのセラピー。既に機嫌の悪い娘を相手に、ひたすらセラピーを進めようとするセラピスト。セラピストからの質問や話し掛けに対し、娘が全く関係ないことを発言したり、気になったおもちゃを指差しながら『遊びたい』ことを訴えるも、セラピストはそういった娘の発言や態度を全て無視するスタンスでした。
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この記事のライター

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