2019年8月21日 更新

更生を支えた少年少女は200人以上。“広島のマザー・テレサ”の活動とは

空腹から非行に走る少年。広島の市営アパートに子どもたちに手料理をふるまい続ける女性がいます。

繰り返される少年非行。テレビやニュースでは連日のように悲しい事件が報道されています。

豊かなはずのこの国で、空腹から非行に走る少年。広島の市営アパートに子どもたちに手料理をふるまい続ける女性。これまで200人以上の更生を支え、いつしか“広島のマザー・テレサ”と呼ばれるようになりました。

“広島のマザー・テレサ”

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中本忠子さん(81)はこれまで200人以上の更生を支え、「広島のマザー・テレサ」と呼ばれています。

中本さんは21歳で結婚。3人の男の子を授かりましたが、末の子が生まれた直後に夫を心筋梗塞で失いました。当時まだ幼かった子供たち3人を女手ひとつで育てた中本さん。

子供の通う中学校のPTA役員になった時、学校は荒れていて、警察に補導された生徒らを忙しい保護者の代わりに迎えに行くうち、顔見知りになった警察官に「保護司になりませんか」と声をかけられたそうです。

保護司とは、保護観察処分になった少年などの更生を助けるための地域ボランティアのこと。

中本さんは「当時は、それって何?という感じよね。でも、わからんけどええよって(笑)」と快諾したそうです。

現在の活動につながるきっかけ

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中本さんは保護司としてシンナーをやめられない中学2年の男子生徒を担当。

袖の中に隠し持ったシンナーを手放そうとしない少年と向き合うなかで、ある日中本さんは少年にこんな質問をします。

「なんでそんなにやめられんの?」

すると少年から予想もしなかった答えが返ってきました。

「腹が減ったのを忘れられるから」

少年は母子家庭で、アルコール依存症の母親から食事を与えられていなかったのです。

「すごい衝撃よね。この時代に食べられない子がいるなんて考えてもいなかった」と中本さんはいいます。

空腹に気づけなかったことを詫び、その晩から毎日、中本さんは少年のご飯を作りました。お腹いっぱい食べられるようになった少年は次第にシンナーをやめ、同じような境遇の友人を中本さんのもとへ連れてくるようになります。中本さんの家は行き場のない子たちの「たまり場」になりました。

その少年は成長し、今では妻子がいて人材派遣会社を経営しており、会の活動を支える存在になっているといいます。

少年が社会に見捨てられている現状

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親が刑務所などで家にいなかった時期があり、3歳上の兄がモヤシを万引きするなどして食いつないだ経験を持つ、8年前から通う「常連」の男性。

中学生の時に同級生が中本さんにと引き合わせてくれ、それ以来、非行に走ったこともあるが、中本さんは見捨てずに支えてくれたそうです。

自分にとって中本さんは「自分のおばあちゃんです」と即答する男性。 「少年院に行った時の審判でばっちゃんが来とって泣きました。もう心配かけたくない」といいます。

中本さんは、男性のような少年が社会に見捨てられている現状にこう言います。

「居場所のない子は、広島だけじゃなくて全国どこにでもおると思うよ。表面化しとるかどうかだけ。それなのに行政も裁判所も、食べられない人が実際におるという末端の実態を知らんのよ。あまりにも怠慢じゃろう」

支援の輪が広がる

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毎日、アパートの廊下まであふれかえる靴に驚いた近所の田村美代子さん(68)が事情を知り、手伝うようになります。毎月10万円にもなる費用は、10年間は自費でまかなった中本さん。その後少しずつ活動が知られるようになり、民間財団や共同募金会などの支援を受けられるようになります。

自宅での活動に加え、公民館での食事会も始めます。非行少年を冷たい目で見がちな地域住民と、普通の大人を知らない子どもたちとを引き合わせるためです。

食事会は2003年に『食べて語ろう会』という名称がつき、月2回の定期開催となり、子どもたちが無償で参加できる会が今も続けられています。

2015年「社会貢献者」として表彰

平成27年度受賞者:中本 忠子さん - YouTube

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